リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

商船三井のタンカーを攻撃したのはアルカイダ系組織と断定

 5日前の記事ですが、ニュースの紹介です。今年7月におこった日本の原油タンカーへの攻撃は、犯行声明の通り、アルカイダ系のテロ組織によるものだと断定されたそうです。(時事通信11/23)

商船三井の原油タンカー「M・STAR」が今年7月、ホルムズ海峡を航行中にテロ攻撃を受けた事件で、米運輸省は22日までに、攻撃は国際テロ組織アルカイダ系組織による犯行と断定し、さらなる攻撃の可能性を警告する通達を発令した。  


通達は19日付で「(アルカイダ系の)アブドラ・アッザム旅団がM・STARを攻撃したという主張に根拠があると確認できる」と指摘した。また「同組織は引き続き活発に活動しており、ホルムズ海峡アラビア湾南部、オマーン湾西部でさらなる攻撃を行う可能性がある」として、これら海域を航行する船舶に対し、警戒を強めるよう呼び掛けた。(2010/11/23-06:06)

時事ドットコム


 事件のあらましは、こうです。2010年の7月26日、商船三井のタンカーが中東から日本へと原油を運んでいた途中、船内で爆発が生じました。事故か、とも思われましたが、調査してみたところ火薬の痕跡が見つかったため、他の船から攻撃を受けたのだと分かりました。攻撃したのは俺だ、と犯行声明を出したのは、アブドラ・アッザム旅団というイスラム原理主義のテロ組織です。この組織は911テロ等を起こしたテロ組織アルカイダの下部組織にあたります。


 アブドラ・アッザム旅団が出した犯行声明には、こうあります。

アッラーのための一連のジハードは、この体制に打撃を与え、抑圧から解放し、盗まれた信仰の権利と土地を回復するためであり、その線上にある(今回の)行動は、殉教者アブドラ・アッザム旅団所属ユセフ・ウヤイル隊の兄弟ムジャヒディン達が、異教徒のグローバルシステムにとって重要な経済大動脈で果敢な攻撃をかけものである。そして攻撃は所期の成果をあげた…。


(中略)


本船は最新、最大級のタンカーのひとつであり、200万バレルほども原油を輸送するのである。しかも、世界の海上輸送上最も重要な水域のひとつで、攻撃を敢行したのである。ホルムズ海峡は、異教徒のグローバル体制にとって最重要の経済大動脈であり、海峡一帯は敵艦船が蝟集している水域で、アッラーがムジャヒディンを守って下さらなければ、この鉄壁を突破するのは至難の技であったろう

ホルムズ海峡での商船三井のタンカーへの攻撃 - 国際情報センター - Yahoo!ブログ

 このような声明が事件の後、ネット上で掲げられました。攻撃が行われたホルムズ海峡は極めて重要な場所です。だからこのテロ事件は大きな関心を呼びました。アブドラ・アッザム旅団は犯行声明において、攻撃をやった場所が「重要な経済大動脈」だと強調し、その成果を自賛しています。現場のホルムズ海峡は世界の原油輸送量の4割が通過すると言われる重要なシーレーンです。ここでテロが相次ぐようであれば、その影響は深刻かつ広範囲に及ぶでしょう。

 米運輸省の通達によれば、アブドラ・アッザム旅団が自称した通り、タンカーへのテロは彼らの犯行だと断定されたそうです。また通達は攻撃が再度行われる恐れを指摘しています。このような海上テロは、ソマリア海賊と同様、当該の海を利用するすべての国にとって脅威です。特に一次エネルギーの4割以上を石油輸入に頼っている日本にとっては、自由に貿易ができる秩序を防衛することが、すなわち我が身を守ることなのであってす。向後は近隣国の海上警察力強化の支援や、対イラン外交での欧米との協調がさらに重要になると考えるべきでしょう。